たっぷりひたれます。
『百年の孤独』『最後の宴の客』『伝奇集』
『フランケンシュタイン』『バルタザールの遍歴』
『百年の孤独』 |
ガルシア=マルケス / 新潮社
--- 絢爛たる黙示録 ---
以前三省堂で「大学時代に読むべき本」とゆーコーナーが一時期ありました。その約一年前、大学の後輩が飲み会で熱く語っておりました。そーいう経緯で購入し、大当たり。
蜃気楼の町マコンドで、百年にわたるブエンディーア一族の栄枯盛衰が繰り広げられる。死者は語り、生者は来たりて歩み去り、乱痴気騒ぎと隠遁が繰り返され、予言は成就し、痴愚と英知は織りなされる。とにかく読むべし。
最近改訳が出版されたので手に入れやすくなってます。
『最後の宴の客』 |
ヴィリエ・ド・リラダン / 国書刊行会
--- 零落貴族の燦然たる罵倒 ---
大分前に買って、ようやく読む番が回ってきた本。短編集。
数年前のエヴァブームで便乗的に文庫化されたとしか思えない「未来のイヴ」と同じ作者である。薄ぺらい豊かさの高慢へナイフを突き立てるようなストーリーテリングは他の追随を許さない。美辞麗句を極めて罵倒すれば立派な文学になるというお手本。
個人的には、冒頭の「希望」がお薦め。この上もない侮辱の物語となっている。
『伝奇集』 |
ホルヘ・ルイス・ボルヘス / 福武書店
--- 虚構の侵食 ---
ガルシア=マルケスと並ぶラテンアメリカ文学の代表的作家ボルヘスの代表作。ネタ的には幻想文学の基本的なものだが、物語を構築する文章の豊かさが読者を引き込まずに入られない。欧羅巴文学やラヴクラフトの「クトゥルー」の影響も多分あるのだが、作品世界の巧緻さはオリジナルなものだ。
架空の世界を描いた書物についてのエッセイ「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」。上もなく、下もない永遠の塔として語られる図書館の話「バベルの図書館」。"可能性"の書物をめぐる物語「八岐の園」など、書物を巡る奇譚が揃っている。
幻想文学を志す人は必読だと思う。
『フランケンシュタイン』 |
メアリ・シェリー / 東京創元社
--- 妄想少女の系譜 ---
無条件におもしろかった。
と、それだけではおすすめの文にならないですな。とにかく有名な作品です。フランケンシュタインという若き天才科学者が見境のない熱狂に駆られて人造人間を創り出してしまった。ところが彼は人造人間に命を吹き込んだ直後我に返り、神ならざる者が命を造ってしまったという罪悪感のあまり、研究を放りだしてしまう。ところが、人造人間=怪物は生き延び、彼の前に再び姿を現した‥‥‥という筋書きの物語です。
子を見捨てた父親に愛情を求める息子、或いはコミュニティからはじき出された存在が必死で自己の存在理由を求める等々、多面的な読み方が出来ますが、要するにこれは"母親無きオイディプス"の物語ですね。このシチュエーションって現代日本では王道といってもいいテーマ。特にこれは若い女性が弱い話のタイプです。て、これ書いたのは若い娘さんだわ、約170年前のだけど。1世紀以上前の人と心性に共通するものがあるというのも興味深いです。
フランケンシュタインというと映画のおどろおどろしいイメージがありますが、本家はちょっと違うイメージです。スイスアルプス、暗い研究室、イギリス、アイルランドから北極圏へと舞台を移すあたり、「寒い」イメージですね。
『バルタザールの遍歴』 |
佐藤亜紀 / 文芸春秋
--- 愛(かな)しむべき不器用の極致 ---
主人公は一つの身体を共有する双子。貴族の一員として生まれ、時代から外れて放浪と放蕩の人生を突き進む。ここまで行き当たりばったりだと、あっぱれとも言うべき人生である。
これであるべき、あれではないはず、という観念からは無縁であるが故に、自分のあり方を刹那的な放蕩という形でしか選択できない不幸な人間の寓話だと思っている。
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