Library Area
line
書院

そこにいたひとびと

実話やルポタージュです。
ビジネス系ではないのでご安心を
『放浪の天才数学者エルデシュ』『エンデュアランス号漂流』
『我々はなぜ戦争をしたのか』

line

dot 『放浪の天才数学者エルデシュ』

ポール・ホフマン / 草思社
--- 幸福な数学者の伝記 ---

トマトジュースを飲むために紙パックに包丁を突き刺して、床にジュースをぶちまける(紙パックが開けられなかったらしい)。太陽が昇る前から人を叩き起こして数学の証明問題を始める(1日19時間証明問題に没頭していた)。自分の靴ひもを結ぶのさえ苦手で人を呼ぶ(流石に無視された)。手間かかるなぁ、実際にこんな爺さまが私の家に泊まっていたら本当に困るんですけれど(笑)。
一生で1475本の論文に名を連ねた数学の天才の伝記と、数学界を発展させた偉才達のルポタージュです。事実は小説よりも奇なりと言うだけあって、小説によく出てくる「天才」達よりも(いろいろな意味で)一回り凄い人々がぞろぞろ出てきます。
素数と暗号、非ユークリッド平面と宇宙の姿、組み合せ論と電話料金‥‥‥数学って結局何かの役に立つんですね。高校時代にもうちょっと数学やっておくべきだったかなぁ。


line

dot 『エンデュアランス号漂流』

アルフレッド・ランシング / 新潮社
--- マラソン漂流からの生還 ---

1914年12月にスタートした南極大陸横断隊は遭難した。しかし、隊長シャクルトン率いる28名は17ヶ月後に全員生還を果たした。この実話を隊員達の日記や当時存命していた隊員のインタビューを加えてまとめたノンフィクション。
この漂流の凄さは映画のような一過性の波瀾万丈ではなく、普通に生活しながらじわじわと追いつめられてゆく点であると思う。卓越したリーダーのシャクルトンと極限状況にあっても不思議なマイペースさを保った隊員達、そして時折交えられる鮮明な写真が印象的な一冊。


line

dot 『我々はなぜ戦争をしたのか』

東大作 / NHK出版
--- 戦争は回避できなかったのか ? ---

この本はベトナム戦争を戦ったアメリカとヴェトナム双方の政策・外交の中核にいた当事者たちが1998年にハノイで行った対話をまとめた本。相手を理解しようと努力することは本当に難しいなぁ、と思ってしまいます。
率直さゆえの痛い言葉が続き、かーなーりブルーになりますが、非常に示唆に富む本でした。双方共にベトナム戦争に対して良心の痛みと、大きな問題意識を持ち、何が事態を悪化させたのか語り合ってゆくのです。我々はどうすべきだったのか、と。
そして明らかになったのは、アメリカの戦争に対する思想の特殊性と、理解の隔たりの大きさに愕然とする当事者達、その当事者達が語り合う意義の大きさです。あの時代、共に彼らは極めて真摯でした。しかし無理解が彼らを戦争に駆り立てたのです。彼らは遅すぎましたが、それでも、このハノイ対話で理解の一歩を踏み出すことができました。
私たち、そして現代の政策担当者達はベトナム戦争の頃の彼らと同じ轍を踏んではいないだろうか ? そんなメッセージをこの本は投げかけてきます。


line
dot Top
dot Library Area Top