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書院

幻想との境界

非日常の浸潤。
『ノースウェスト・スミス 大宇宙の魔女』
『戦争を演じた神々たち[全]』『アルーア』『影が行く』

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dot 『ノースウェスト・スミス 大宇宙の魔女』

H .L .ムーア / 早川書房
--- 遙か未来の流れ者の話 ---

濃厚にラヴクラフトの香りがする。遙か古の滅びた神、宇宙の真実を秘めた言葉、抜け出せない夢、美を食物とする異界の生き物。そして、松本零士のイラストが幻想性を際だたせる。この人選は偉い。
SFにアレルギーのある人でもホラーが読めれば大丈夫だろう。SF用語は大して出ない(「熱線銃」と「○○星人」と「異次元」程度)。文字通りコズミック・ホラーである。短編集なので読み切りやすいが、敢えて難を言えばどの話も雰囲気が似すぎているということだろう。
なんと1930年代の、おまけに女性作家の作品。1999年現在再版中。


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dot 『戦争を演じた神々たち[全]』

大原まり子 / 早川書房
--- 時と存在の織りなす戦争の本質 ---

いくつかのテーマを縦糸とし、神話という切り口で構成した短編の複合体。元々は2冊だったが再構成してより鮮明な印象を与える作品集になった。圧倒的な未来のヴィジョンが異質で美しい。矛盾も神話の要素の一つと思えば、気になるどころか魅力の一つにもなりえることを証明している。
読んで損のない一冊、否、読みなさい。


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dot 『アルーア』

リチャード・コールダー / トレヴィル
--- 生きた人形と人だった衣服 ---

古本屋で何となく買った一冊。没落寸前のヨーロッパで最後の産業は奢侈品の製造だった。特にナノテクノロジーを駆使して生み出されたのブランド品の人形たちは‥‥という設定は最近の人が好みそう。
短編集で最後の一作品だけ連作から外れている。これも人の記憶を全て記録する繊維で出来た服の話。


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dot 『影が行く』

中村融 編訳 / 東京創元社
--- 怖いのも、怖くないのも ---

粒よりの作家と珠玉の短編を揃えたホラーSF短編集。なまもの系、吸血鬼(機)系、侵略系といろいろ揃っています。恐怖の質も様々。
個人的には、地球に帰還した探検隊を待ち受ける惨劇「探検隊帰る」(探検隊が哀れでならない)や、戦慄てんこ盛りの後半部が印象的な「ヨー・ヴォムビスの地下墓地」、認識の相違が鍵の「唾の樹」がお薦め。


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